ビジネス香川 -「いま」を伝え、「未来」を育てる-

朝日新聞購読のご案内

文字サイズ
標準
拡大

ビジネス香川 ここにもあります 高松空港ANA・JAL便搭乗口、ことでん高松築港・片原町・瓦町・栗林公園・仏生山駅、高松市民病院、高松市図書館、香川県立ミュージアム・東山魁夷せとうち美術館、栗林庵、瓦町FLAG、高松市内のセブン-イレブン・ファミリーマート、JR四国バス ほか

  • プライムパーソン
  • Next開拓魂
  • It's me!それは私です
  • BK NEWS
  • さぬき美探訪
  • さぬき味探訪
  • 動向リサーチ
  • 瀬戸標(せとしるべ)
  • かがわのエンジン
  • 特・選・本
  • 特・選・話
  • 本日、旅日和

さぬき味探訪

VOL.213 2017年3月16日

チシャもみにみる食文化の趨勢

讃岐に「チシャもみ」という郷土料理があります。名前は有名ですが、実はこの郷土料理は消滅しています。今回は「チシャもみ」から食文化を考えてみたいと思います。

讃岐の食文化の中で、「チシャもみ」は実に特殊な料理です。現在でも「チシャもみ」という食文化の名前は残っていますが、昔食べられていた「チシャもみ」は存在しないと考えられています。それは「チシャ」という料理の核となるべき素材が既に存在しないからです。

チシャとは、サンチュなど「かきチシャ」と呼ばれるレタスの一種で、万葉集にも登場するほど日本で古くから利用されている野菜であり、香川県に存在していたチシャもその系統の野菜の一種と考えられます。現在「チシャもみ」は春の料理のように思われていますが、本来チシャは5月から9月にかけて出荷されていた野菜で、夏場の野菜として活躍してきました。高松市中央卸売市場の統計には、「チシャ(とうちさ)」として記録に残っており、約30年前の1986年には年間57トンの取り扱いがありました。57トンという数字は、現在のマンバ(ヒャッカ)の年間取り扱い量の半分くらいであり、かなりの量であることがうかがい知れます。しかし、91年には4トンを割り込み、95年には統計上から消滅しました。

実は、郷土料理「チシャもみ」には文化の断絶があり、現在50歳以上の方で当時の味を知る人は、サニーレタスやサンチュなどで作る「チシャもみ」を「本物ではない」と表現されます。それは、チシャという野菜が存在しないからであり、チシャでなければ本来の「チシャもみ」の味は再現できないことに他なりません。実際、一番食感が近いサンチュで作った「チシャもみ」を食べてみると、私たち世代にとってみれば何の違和感もないのですが、古い味を知っている世代の方は「確かに味はそっくりだが、チシャもみはもっと口の中でとろけるような食感だった」と表現されます。

食文化に必要な3要素は「素材」「調理方法」「味覚」であり、チシャもみではその根幹をなすチシャという「素材」は無く、種すらも失われたとされています。もし香川県のどこかにまだチシャが残っていたら、「チシャもみ」は再び姿を現すのでしょうね。

食文化は時代とともに少しずつ進化し続けているのも事実ですが、調理方法だけでなく、素材と味覚が一体的に継承されてこそ生き続けると感じています。讃岐には、まだまだ多くの食文化が力強く息づいており、それを守ることの大切さを感じます。


(写真提供・レシピ参照:香川県農業経営課)

シニア野菜ソムリエ 末原俊幸さん

高松市市場業務課 主査
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸さん

広告掲載はこちらをクリック!

さぬき美探訪とは

美術館や博物館の学芸員と野菜ソムリエが香川が誇る「美」と「味」をご紹介します。



讃岐を歩く

新緑の茶畑を歩く。初夏の日差しに照らされ、青々とした茶葉がそよ風になびく。この瞬間を閉じ込めたような、爽やかな高瀬の新茶が楽しみだ。

讃岐を歩くの一覧はこちら

ページの先頭へ移動