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プライムパーソン

VOL.215 2017年4月20日

ソレイユ第1ビル4階のホール・ソレイユ=高松市亀井町

高松市中心部にあるソレイユは、2つのスクリーンで年間約150本の作品を上映する、まちの小さな映画館だ。終戦直後の1945年に高松大映劇場として開業し、三代目社長の詫間敬芳さん(70)が受け継いでいる。「お客さんには感動や喜びを提供したい。でも、それ以上に大事なのは続けていくこと。いくらきれいごとを言っても経営が成り立たなければ意味がありません」

映画最盛期、県内には100を超える映画館があった。しかし、テレビやビデオの普及、大型映画館シネマコンプレックス(シネコン)の台頭で次々と姿を消した。現在、シネコン以外で一般映画を上映するのは県内ではソレイユだけだ。

「映画には人生を変える力がある。まさに私がそうだった。経営が苦しく、この先どうしようかと悩んでいた時、奮い立たせてくれたのが映画でした」

ソレイユとはフランス語で太陽を意味する。太陽のような存在になって、まちを明るく輝かせたい。詫間さんは、そう力を込める。

ソレイユは、ヒューマンドキュメンタリーなどシネコンとは一味違ったラインナップが特徴で、香川や四国だとソレイユでしか見られないという作品も多い。「大手配給会社が権利を持つ人気作品のほとんどは、多くのスクリーンを持ち、売上が見込めるシネコンへ配給されます。正直、シネコンからこぼれた作品の中からセレクトして上映するのが私たちの宿命です」

限られた中からではあるものの、一人でも多くの客を呼べるかどうかを見極めて作品を決定する。しかし、たとえ閑古鳥が鳴いても、上映にこだわるものがある。アカデミー賞を受賞した作品やノミネートされた作品だ。「県庁所在地で、しかも香川という教育に熱心なところでアカデミー賞作品が見られないというのは、あまりにも寂しいことです」。良質な受賞作品でも、シネコンでは上映されないケースも多いそうだ。「賞を獲ったからといってお客さんが入るわけではありません。でも、価値のある作品は採算を度外視してでも上映すべきです」

ベンハー、俺たちに明日はない、砂の器・・・・・・心に残る映画を挙げるときりがない。だが、中でも忘れられない2つの作品がある。「フラッシュダンス」と「愛と青春の旅立ち」だ。

「私の人生を変えた映画です」

先代の父から会社を引き継いだ詫間さんは1983年、老朽化した高松大映劇場を現在の地下1階・地上5階建ての複合ビルに建て替えた。ビルにはホールを2つ設け、1つは自主上映の映画館として、もう1つは貸しホールとして大手の映画会社に賃貸する計画だった。しかし、「直前になって先方から『あの話はなかったことにしてくれ』と言われたんです。明確な理由も聞かされませんでした」。いわゆるドタキャンだった。「業界の慣習で正式な契約書も交わしていなかった。借入金の返済もあるのに計画が全く狂ってしまい、目の前が真っ暗になりました」

どうすればいいのか・・・・・・途方に暮れ頭を抱えながら、ある映画館にふらりと入った。「フラッシュダンス」を上映していた。「別にその映画が見たかったわけではなかった。でも、プロのダンサーを夢見る女性のサクセスストーリーで、ダンスが素晴らしく音響も迫力があって・・・・・・映画って良いなあと感激しました」

そして、その数日後に見たのが「愛と青春の旅立ち」だった。リチャード・ギア演じる海軍士官生の友情、愛、成長を描いた映画に心が揺れた。感動のあまり、終演後しばらく席を立つことができなかった。

「そこで心が決まりました。ホールを貸すのはやめる。2つのホール両方とも自分で映画を選んで流そうと。失敗してもいい。とにかく自分でやってみようという気になったんです」

決して経営は楽ではなかった。ライバルとして共に競い合ってきた市内の映画館はどんどん閉館していった。シネコンの登場で、ホールの1つが一時休館に追い込まれたこともあった。でも、ここまで続けてこられた。「苦しくても踏ん張ってやっていく。あの2本の映画が勇気をくれた。映画の力って本当に大きいと思います」。詫間さんはしみじみと振り返る。

旧三豊郡詫間町出身で、創業者の祖父は映画全盛期に県内で11の映画館を経営していた。「昔は家と映画館が一緒で、いつも映写機の鳴る音を聞いていました」

子どもの頃、化け猫映画を見た日の夜は、一人でトイレに行けず母親についてきてもらった。「便器の奥から猫が出てきそうで、もう怖くて怖くて・・・・・・」

印象深いのは鞍馬天狗シリーズだ。アラカンこと嵐寛寿郎が白馬に乗って颯爽と現れ、美空ひばり扮する杉作を危機一髪のところで助けるシーンでは、館内に「待ってました」「いけ~」「やれ~」の掛け声や、拍手喝采が沸き起こった。「当時は終戦直後で辺りは一面焼け野原。娯楽と言えば映画しかなかった。観客の熱気は凄まじく、祖父や父は日本人に希望を与えるすごい仕事をしているなあと尊敬していました」

大学卒業後、百十四銀行勤務などを経て、1973年にソレイユに入社。5年後、先代の父の死去に伴い31歳で社長になった。「実業家として成功していた祖父や父を見てきたので、私も大実業家になりたいと思っていました」

開業当時の高松大映劇場

しかし、テレビの普及で映画産業は衰退の一途をたどった。「映画がどんどん悪くなっていったこともあって、いろいろなことに手を出しました」。ボウリング場、ビリヤード場、本屋に喫茶店、ハンバーガーのチェーン店もやった。「失敗もたくさんしましたが、結局は映画に戻ってきました。やはり私の人生のベースは映画だったんですね」

コーラスライン、ヘアスプレー、最近だとラ・ラ・ランドなどミュージカル系の作品が好きだという。「単純でエンターテインメント性が高い映画が一番です。考えるより、見るだけで元気に楽しくなれる方がいい。ただでさえ経営が苦しいのに・・・・・・」と詫間さんは苦笑する。

もう一つ、好きなジャンルがある。「勧善懲悪もの」だ。「子どもの教育にもいいと思う。映画を見て、善が栄えて悪が滅びることを学ぶ。偏差値を競うよりもよっぽど大事なことだと思いますね」

詫間さんが薦める涙と感動の傑作
「わたしは、ダニエル・ブレイク」。
(4/29~上映)

レンタルビデオもいいが、ぜひとも映画館の大画面で見てほしいと訴える。「迫力や感動は雲泥の差です。ビデオの新作は数百円で、映画館なら1800円ですが、感動の度合いで比較したら私はビデオの方が割高だと思う。人生に与える肥やしだと考えたら、1800円なんてそれほど高くありませんよ」

映画事業だけだと正直赤字続き。パーキング運営などの利益で何とかやりくりしているのが現状だ。それでも一日でも長く映画館を続けたいと詫間さんは話す。

「映画文化を守らなければという気負いはありません。でも、純粋にこのまちの映画館をなくしたくない。設備ではシネコンには到底かないませんが、小さな映画館でのんびりと作品を楽しんでもらいたいですね」

編集長 篠原 正樹

  • 1947年 旧三豊郡詫間町生まれ
  • 1969年 法政大学経済学部 卒業
    百十四銀行 入社
  • 1971年 高瀬ボウル 入社
  • 1973年 ソレイユ 入社
  • 1978年 代表取締役社長

所在地
高松市亀井町10-10 ソレイユ第1ビル
TEL:087-861-3366/FAX:087-861-3433
設立 1948年11月
(1945年に前身の高松大映劇場開業)
資本金 2000万円
事業内容 邦・洋画の封切り上映
喫茶・レストラン・タワーパーキング運営
貸しビル業
地図
URL http://kagawa-soleil.co.jp/

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寒霞渓と並ぶ小豆島の景勝地、銚子渓。この渓谷にある「自然動物園 お猿の国」では、約500匹の猿が戯れる。子猿の愛くるしい表情がなんとも言えない。冬の風物詩「猿団子」も見ものだ。

Photo:T.Nakamura

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