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プライムパーソン

VOL.217 2017年5月18日

配電工事の作業実習などを行う四電工の人材開発センター=高松市鶴市町

街中でよく見かける光景がある。ブルーの作業服を着て、昼夜を問わず電線の点検や工事を行う作業員たち。当たり前のように電気が届く私たちの暮らしは、四電工の技術者によって支えられている。「家庭や企業活動などあらゆる空間に関わり、電気を通して豊かな社会づくりに貢献していく。それが私たちの使命であり誇りです」

四国電力グループで、電気設備や配電・送電工事などを行う四電工の家髙順一社長(66)が最も重視するのは「現場力」だ。施工技術に加え、工程管理や品質管理、協力業者とのコミュニケーションなど、現場を束ね、統率する力を社員たちに求める。「私たちが行う工事は危険が伴うものも多い。命がかかっている仕事だからこそ、現場力を養わなければなりません」

高松市鶴市町にある研修所では今まさに、約80人の新入社員がみっちり電気工事の訓練を受けているところだ。家髙さんは、技術と現場力を備えた社員たちが「自分の人生を託す値打ちがある」と思えるような会社にしていきたいと力を込める。

  四国電力が約30%を出資する四電工は、四電から発注を受けた電力供給設備工事が売上のほぼ半分を占める。3月、家髙さんは社内の組織を大幅に替えた。電力小売りの自由化などで四電向け工事の先行きは楽観できないと見て、「一般向け」と呼ばれる四電以外の仕事にターゲットを絞った組織に拡充した。「四電の仕事は我が社の土台としてきっちりこなしていく。しかし、伸びしろは『一般』にある。“四電ブランド”に安住せず、一般向けの工事で稼ぐ体質に変えていかなければこの会社は伸びていきません」

  香川県立中央病院、四国内の給食センターや学校施設の設備工事、先月リニューアルオープンした屋島レクザムフィールド(高松市屋島競技場)の運営管理など、組織再編を先取りして受注に繋げた一般向け案件も既に多くある。「四国の中で深掘りしていくのに加え、四国外にも目を向けています。全国各地、さらには海外まで、とにかく広げていくというのがこれからの一番の力の入れどころです」

四電工が電気設備を手掛けた
香川県立中央病院=高松市朝日町
 

  2015年6月の社長就任後、現場の本音を汲み取ろうと1年掛かりで四国内約40カ所の支店や事業所全てを訪ねて回った。徳島支店が管轄する淡路島の淡路営業所で、社員にこう聞かれた。

  「社長、この営業所をもう閉じようと思っているんですか?」

  社員わずか2人。過去にあまり実績をあげられていない小さな営業所だった。本音をぶつけられ、家髙さんも本音で返した。「何を言っているんだ。そんなことを考えながら仕事をしても面白くないだろう。頑張れば営業所が支店になる可能性だってある」。「まずはチャレンジしてみようと発破をかけたんです」と振り返る。

  2人は奮起し、野球場やサッカー場、多目的グラウンドなどを持つ、淡路島有数の運動公園のナイター設備工事の受注を取り付けた。「公式競技ができるような明るさになるようしっかり作りたいという仕事でした。徳島支店も『何とかしようぜ』とバックアップに回ってくれました」。先日行われた起工式に出席し、「挑戦する大切さを社員と共有できたという喜びが再び込み上げてきました」と目を細める。

  愛媛県南部の旧広見町で生まれ育った。「農家の生まれで自然の中で育てられました」。商社への就職を目指していたが、父親が大病を患ったこともあり、「できるだけ地元に近い方が良いかなと思い」、松山商科大学経済学部(当時)を卒業後、四国電力に入社した。

  四電では専ら企画畑を歩み、イベントの企画や商品開発プロジェクト、企業の特徴や個性を再構築するCI(コーポレート・アイデンティティ)などを手掛けた。中でも印象深いのは2004年に着任した新居浜支店長時代だ。「この年は台風の当たり年で、全国で10、四国に6つ上陸しました」。各地で停電が相次ぎ、対応に追われた。「一向に収まらない強風の中、社員らは『行かせてください』と言うんです。『停電の復旧をお客さんが待っている。何とかしてあげたい』と。こういう連中が会社を支えてくれているんだ、やはり一番大切なのは現場なんだと痛感させられました」

  四電の副社長だった一昨年、四電工の舵取りを命じられた。技術者ではない自分が技術者集団のトップになる。最初は大きな戸惑いがあった。「私が来る意味は何だろうと考えました。全体を見て、現場から盛り上げていく。現場力を次の世代にしっかり残していく。それをやるために私はここに来たんだと覚悟を決めました」

  社長就任後、つらい事故が相次いだ。山林に立つ電柱周辺の伐採作業中、倒木の下敷きになり協力会社の作業員が亡くなるなど、4件の死亡災害が起きた。「大きなショックでした。どこに原因があって、やるべきではない見逃しや確認漏れはなかったのか。現場の意見を聞き、改善策を探りました」

  伐採作業の経験が豊富な元営林署職員をすぐさま雇用した。「作業にあたる人たちは経験に基づいて工夫しながらやっているはずだが、プロの目には違ったものが映るかもしれない。1件1件の伐採作業をする前に現場に入り、注意点や作業の一番の勘所を指摘してもらうようにしました」

  できることは何でもやる。先を見て、今何をすべきかを考えなければならない。家髙さんは強い口調で語る。

鉄塔での送電設備工事を行う作業員

  新しい施設などがつくられる際、一番最後に行われるのが設備工事だ。「工期が遅れていると、そのシワ寄せが全部掛かってくる。休日返上も当たり前。つらい役回りです」。山奥の鉄塔工事で何日間も現場に張り付くこともある。「3Kだと言われるこの業界の新入社員は、1年で2割が辞め、5年経つと半分に減ることもあります」。しかし、こう加える。「将来、あらゆる職種がロボットに置き換わると言われていますが、私たちの仕事はいくら人工知能が発達しても絶対にロボットにはできません。誇りある『人』の仕事なんです」

  昨年4月に発生した熊本地震。四電工のスタッフも九州電力の応援部隊として現地へ向かった。被災した南阿蘇の病院に入り、一日も早い診療再開を目指して電力の復旧作業にあたった。

  病院の一角に、被災者が困ったことや要望を意見する投書箱が設けられていた。ある小学生の女の子がこんな投書を寄せた。

  「私のおばあちゃんは今入院しています。電気がないと酸素が吸えず死んでしまいます。この寒い中、早く直してくれて助かりました。電気屋さん、本当にありがとう」

  涙が出るほどうれしかった。「私たちはどちらかと言うと裏方の仕事です。スポットライトが当たることはまずありません。でも、皆いい仕事をしているんです」。見る人はちゃんと見てくれている。これからもひたむきにやっていこう。そんなメッセージを添えて、投書を全社員にメールで回覧した。

  「社員たちには自分の仕事に誇りを持ち、積極的に参画してきてほしい。社員が生き生きしている会社を目指していきたいですね」

編集長 篠原 正樹

  • 1950年 愛媛県旧広見町生まれ
  • 1973年 松山商科大学経済学部 卒業
    四国電力 入社
  • 2004年 新居浜支店長
  • 2009年 常務取締役 総合企画室長
  • 2013年 取締役副社長
  • 2015年 四電工 取締役社長
  • 所在地
    高松市花ノ宮町2丁目3番9号
    TEL:087-840-0230/FAX:087-840-0231
    設立 1963年5月1日
    資本金 34億5125万円
    従業員数 2095人(2017年3月)
    事業内容 建築設備工事、電力供給設備工事 他
    地図
    URL http://www.yondenko.co.jp/

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四国村を歩く。厳しい残暑のなか、400個あまりの風鈴が人々に涼を送る。蝉の大合唱を包み込むような、響き合う風鈴の音。立ち止まって耳を澄ますと、蝉と風鈴の対話が聴こえてくる。今年の夏は、まだ続きそうだ。

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