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プライムパーソン

VOL.220 2017年7月6日

坂出市大屋冨町の北四国クレーン・坂出機材センター。クレーンは500トン吊りのSL6000J-2

国内に2台しかない世界最大級の1600トン吊りクレーンを筆頭に、“モンスタークレーン”と呼ばれる巨大クレーンが、坂出市の海沿いにある北四国クレーン機材センターに所狭しと並ぶ。高速道路や橋、プラントの建設など様々な工事現場に出動し、大きく重い資材を次々と吊り上げる。

「自分たちが計画した図面通りに、巨大な構造物や機械設備を一発で吊る。その快感はたまりません」

世界に30台、国内に2台しかないドイツ製1600トン吊りクローラクレーンCC8800-1。右は全景
 

木村孝徳さん(45)は30歳の若さで、創業者の父から北四国クレーンを引き継いだ。当時はバブル崩壊後の建設業界の低迷期。巨額の借金もあった。「逃げ出すのは嫌だった。日本がダメなら海外に目を向ければいい。受け身ではなく、攻めの商売に徹しました」

今後、世の中はどのように変化し、何を吊ることを求められるのか。木村さんは常に時代の先を読み、クレーンを巧みに操る技術力を武器に、社会を形づくる重量物を吊り上げていく。

瀬戸大橋や明石海峡大橋、火力発電所の建設に、製油所や化学工場のプラント工事。北四国クレーンは西日本を中心に様々な大規模工事に携わり、1966年の創業以来、半世紀にわたって社会インフラを支えてきた。「業態で言えばクレーンのリース業。所有する最適なクレーンと、クレーンを操縦するオペレーターを現場に派遣し、品物を吊って納めます。工事の計画段階から加わり、作業プランの提案から始めるのが私たちのやり方です」

クレーンは十数トン吊りの小型のものから、世界最大級の1600トン吊りまで計32台を所有している。「私は時に突拍子もないことをする癖があるんです」。日本に1台しかない大型クレーンをあるライバル会社が持っていた。木村さんは突然、「あのクレーンを買ってくるわ」とドイツへ飛び、25億円で購入した。「借金が増えて、みんなごめんな」と思ったが、それを上回るだけの確信があった。「何年か後には世の中がこういう方向に行くから、今買っておかないとダメだと思った。常に考えているのは5年先、10年先をにらんだクレーンのラインナップです」

クレーンとは、将来的に仕事があるかどうか分からないものに何億円も投資するリスクの高い世界。だが、「逆に将来を見通せていれば、その時点ではまだ需要が少ないクレーンを非常に安く買うことができます」。同業者には「そんな大きなクレーンを買って何を吊るんだ」と言われることもある。しかし、木村さんには確固たる信念がある。「吊るものに合わせてクレーンを買うのではない。吊り上げる品物ありきではなく、クレーンありき。大きなクレーンがあれば、それまで小分けにしていたものを、巨大なまま一発で吊ることができる」。そして、こう続ける。「そうすれば新たな仕事が生まれる。仕事そのものを作り出すために、私はクレーンを買うのです」

バイクレーサーを夢見て高校を中退し、父親から勘当された。クラッシュ事故で大ケガをし、夢をあきらめ、目標を見失ってホームレス生活を送っていたこともある。

1990年、19歳の時にバブル景気の人手不足で父親に「帰ってきて会社を手伝え」と勘当を解かれ、北四国クレーンに入社、クレーンのオペレーターとして、西瀬戸自動車道(しまなみ海道)の建設現場などを経験した。

社長就任は30歳の時。突然だった。2001年、60歳になった父から「あしたからお前が社長をしろ」と告げられた。「はあ?という感じで冗談かと思いました。でも、翌日から父は会社に現れず、経理の女性に『社長は?』と尋ねたら、『いや、あなたが社長ですよ』と言われ、本当に私が社長になったんだと知りました」

最初に迎えた月末にいきなり試練が訪れた。資金繰りのため銀行に融資を頼んだら、「いや、あなたには貸せない。前社長の連名がなければ無理です」。父に連絡すると、「お前の会社だろう。俺は辞めたから関係ない」。融資を受けないと会社が立ち行かなくなる。「社長としての初仕事は父に頭を下げることでした。お願いですから一緒にサインしてくださいと」。屈辱だったが、同時に強い決意が生まれた。「自分のサインだけで、ちゃんとこの会社の面倒が見られる社長になってみせる」

資金繰りの厳しさと社長としての覚悟。「今思えば父はそこまで分かっていて、銀行とも示し合わせていたんじゃないかと思うんです」。いい勉強をさせてもらい父には感謝している、と木村さんは笑顔で振り返る。

若社長に試練はさらに続いた。当時はバブルの崩壊で建設業界は青色吐息。北四国クレーンもあおりを受け、売上は激減。帳簿を見ると実に27億円もの借金があった。「香川県で社長の借金王選手権をすれば、間違いなく30代で第一位だったでしょうね」

木村さんは全社員を集め宣言した。「3年は給料を上げられない。3年後には必ず上げるので我慢してほしい」「今、国内ではクレーンは動かないので、海外プロジェクトに着手する。私は月にクレーンが必要だとしたら、月にも行くつもりだ」。そして、こう締め括った。「海外でもどこへでも行くという思いの人だけ残ってほしい。こんな社長についていけないというなら、退職金の保証も次の職場への斡旋もするので、辞めてもらってかまわない」

十数人が退職を申し出た。とてもつらかったが、「私のやり方に納得してもらい、心を一つにしないと前に進めないと思いました」

最初の海外プロジェクトは、ロシアのサハリンにLNG(液化天然ガス)プラントを造る工事だった。クレーンをバラバラに解体し、坂出市の林田港からロシアへ向けて積み出した。「期間が3年半の大プロジェクトで、不景気で国内が厳しい時期を切り抜けました」

さらに、当時持っていた約60台のクレーンのうち、稼働していない半数を売却した。「クレーンというのは、必要とされるところに売り込んでいける商売です。儲からないクレーンを持っていても意味がない。利益率の高いクレーンをどんどん動かそうと攻め続けました」。27億円の借金はわずか5年で完済した。

将来、クレーンでどんな仕事を生み出せるのか。木村さんは、常温核融合に注目している。核融合の際に発生する膨大なエネルギーを安定的に安全かつ低コストで作る新技術で、東北大学などで研究が進められている。「原子力に替わる“夢のエネルギー”と呼ばれています。将来、新エネルギーを作り出す常温核融合炉が必要になる時代が来るかもしれません」。そして、こう続ける。「日本はエネルギーを持っていない国。エネルギーは人に例えると食べ物と同じで、どんなに不景気になってもこれだけは欠かすことができない。エネルギー分野には今後、より一層力を入れていきたいと思っています」

技術に裏付けされた最適で安全な独自の工法を提案し、顧客とWin-Winの関係を築いていきたいと話す。「毎回、吊り上げる品物の形状が変わり、重心が変わる。風や雨など自然の影響も受ける。一人前のオペレーターになるには少なくとも10年は掛かります」。真の技術者集団になるのが木村さんが描く理想だ。

「人って大きいものに惹かれるじゃないですか。大きなクレーンで超巨大なものを吊り上げる。これほどダイナミックでやりがいのある仕事は他にはないと思うんです」

篠原 正樹

  • 1971年 高松市生まれ
  • 1987年 大検(大学入学資格検定)取得
  • 1990年 北四国クレーン 入社
  • 2001年 代表取締役
  • 2004年 香川大学法学部 中退
  • 所在地
    本社:高松市一宮町228番地1
    TEL:087-885-0161/FAX:087-885-0165
    坂出機材センター:坂出市大屋冨町3099-40
    設立 1966年9月1日
    資本金 3500万円
    従業員数 35人
    事業内容 重量物運搬据付工事、プラント据付工事、橋梁架設工事、機械器具据付工事
    関連会社 北四国重量輸送有限会社
    株式会社きらら
    北四国エナジー株式会社
    地図
    URL http://www.crane-ksc.co.jp/

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まんのう町塩入を歩く。甘柿であろうと渋柿であろうとも、柿色は目に鮮やかだ。二十四節気の「大雪」を迎え、そろそろ柿の季節も終わる。

Photo:T.Nakamura

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