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プライムパーソン

VOL.227 2017年10月19日

昨年11月、県境を越えて開設した観音寺信用金庫四国中央支店=愛媛県四国中央市

香川県の西部、三豊・観音寺を主要営業エリアに、1920年に創業した観音寺信用金庫。創業年こそ赤字だったものの、2年目以降、100年近くにわたって毎年黒字経営を続けている。

財務状態の健全性などを示す指標の一つ、自己資本比率は、銀行などの金融機関では10%前後が一般的だとされるが、観信は実に25%を超える。「この地域の人は実に堅実。地元企業は不良債権も少なく、バブルに踊らされることもなかった。だからこそ、私たちも堅実に歩んでこられたと思う」と須田雅夫理事長(63)は説明する。「ただ、これからはそうはいかない。危機感を持ってやらなければなりません」

一昨年、理事長に就任した須田さんは「課題解決型金融」の実践を目標に掲げた。信金の使命でもある地元密着をさらに徹底し、企業が抱える課題やニーズを把握。中小企業診断士などの専門家とも連携し、相続や事業承継など資金面以外でもサポートするというものだ。「金利を競い合う従来通りの営業では、お客さんはもう見向きもしてくれない。金利でやって来たお客さんは、金利で逃げていきます」

ビジネスモデルを変革しなければ生き残れないと須田さんは繰り返す。「『課題解決型金融』の肝はコンサルティング機能です。『観信に行けばすべて解決してくれる』。そんな存在になりたいと思っています」

複数の金融機関に多額の借金を抱える地元のある企業があった。「業績は少しずつ回復していましたが、過去の負債が重荷になって苦しんでいました」。どうすれば課題を解決できるのか。須田さんらは、この会社に融資している銀行に対し、「地域の雇用を守るため、利息を減免してもらえるなら観信が元金をまとめて支払う、と担当役員が何度もお願いに回りました」。結果、各銀行の協力を得ることができた。「いわばライバルでもある他行と、こんな交渉をするなんて通常ではまずありえません」

その後、身軽になったこの会社の業績は好転した。「未来がない」と駆け込んで来た社長の表情は一変し、「『観信のおかげで未来が明るくなった』と喜んでもらえました」。これほど仕事冥利に尽きることはないと須田さんは目を細める。

高校の体育教師になり、サッカーを指導するのが夢だった。出身は観音寺市だが、高校はサッカーの強豪、高松商業へ進んだ。「高松の子は、体力的にも技術的にもレベルが全然違いました」。正直、これはかなわないと思った。でも、「とにかく負けず嫌いなので、負けてたまるかとがむしゃらにやりました」。猛練習に耐え、2年生でレギュラーになり、インターハイにも出場した。「社会人リーグでも力を試してみたくなりましたが、でもやはり指導者になって、香川のサッカーのレベルを上げたいと思っていました」。しかし、大学受験に失敗。教師になるという夢は叶わなかった。「応援してくれていた父のがっくりとした表情は今でも忘れられません」

高校卒業後の1973年、家族の勧めもあって地元の観信に入った。主に営業畑を歩み、ノルマが達成できず悩むこともあったが、「預金集めは死にものぐるいでやりました。大卒の連中には絶対に負けたくなかった。高卒という負い目があったのかもしれませんね」

負けず嫌いな性格とサッカーで培った根性でここまでやってこられたと振り返る。「融資を担当し始めてから仕事が面白くなった。お客さんの喜ぶ顔が見られ、感謝の言葉もかけてもらえる。やりがいのある天職に巡りあえたと、今では思っています」。うれしそうに須田さんは話す。

須田さんの経営方針は「トリプルC」。チェンジ(change)とチャレンジ(challenge)の先にチャンス(chance)が生まれるというのが信念だ。

昨年11月、大きなチャレンジに出た。愛媛県四国中央市に進出し「四国中央支店」を構えた。四国の信用金庫が県を越えて支店を出すのは初めてのことだ。「四国中央市と三豊・観音寺は、昔から文化や商圏の繋がりが濃く、親近感もある。もちろんマーケットも申し分ありません」

支店オープンを祝うテープカット=昨年11月、四国中央支店

1970年代、香川には坂出、丸亀、多度津、琴平など6つの信金があった。しかし、時代の変遷などで再編され、現在県内の信金は観音寺と高松の2つだけになった。「信金に留まらず、全国の金融機関で統合や支店閉鎖を耳にする。でも、私たちは健全な財務基盤をフルに生かして攻めていきたい。地元密着の観信にしかできない仕事は必ずあります」

地方経済の低迷や日銀によるマイナス金利政策など、一番大変な時期に理事長を引き受けてしまったと苦笑する。「楽観主義なので、この相当きついアゲンストの中で踏ん張れば、いつかフォローの風が吹いてくれるのではと思っているんです」

2年後、観信は創業100周年を迎える。「地域に育ててもらって歩むことのできた98年です。地元企業と私たちは、ともに発展し成長していく、まさに運命共同体。地元にもっと密着し、信じる道を進んでいけば、必ず光は射すと信じています」

和風建築が特徴の仁尾支店=三豊市仁尾町

篠原 正樹

  • 1954年 観音寺市生まれ
  • 1973年 高松商業高校商業科 卒業
    観音寺信用金庫 入庫
  • 1997年 三野支店長
  • 2002年 常勤理事
  • 2007年 常務理事
  • 2013年 専務理事
  • 2015年 理事長

所在地
観音寺市観音寺町甲3377番地の3
TEL. 0875・25・2181
設立 1920年3月16日
出資金 6億6500万円
会員数 1万8980人
職員数 154人
店舗数 17店舗
事業内容 預金業務、融資業務、為替業務、国債の窓口販売、証券投資信託の窓口販売 他
地図
URL http://www.kanshin.co.jp/

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讃岐を歩く

寒霞渓と並ぶ小豆島の景勝地、銚子渓。この渓谷にある「自然動物園 お猿の国」では、約500匹の猿が戯れる。子猿の愛くるしい表情がなんとも言えない。冬の風物詩「猿団子」も見ものだ。

Photo:T.Nakamura

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